アーク溶接作業者の難易度や役立つシーンを紹介
目次
就職活動や転職活動のときに、何か資格があると有利です。ただ「どんな資格なら有利になるのだろう」「就職に困らない資格はどれだろう」と悩まれることでしょう。
アーク溶接作業者は、試験不要で講習会の受講だけで取得できる国家資格です。合格率も100%近く、比較的簡単に取得できます。
アーク溶接とは火花の熱を使って金属を接合する溶接技術です。工場などでよくみられる、四角いフェイスガードを片手に青白い光と火花で作業しているのがアーク溶接です。
金属加工現場では必須と言える資格で、毎年多くの人が受験して資格を取得しています。
この記事ではアーク溶接作業者の資格取得のために、受験方法や講習の内容を紹介します。アーク溶接作業者は試験不要なので、受験対策を行う必要なく資格を取得できます。アーク溶接作業者の資格取得を検討している方は、記事を参考に受講手続きを進めましょう。
アーク溶接作業者とは

アーク溶接とは、金属電極と非溶接物との間にアーク(火花)を発生させ、その熱で溶接する方法です。材料同士を高い強度のまま接合できるため、機械や建築物などさまざまな溶接作業でアーク溶接が用いられています。
作業を行うアーク溶接作業者は危険が伴う作業であるため、特別教育を受講した国家資格保有者しか行えないようになっています。ただし資格を得られると、建築・建設現場や自動車メーカー、鉄工所など様々な金属加工業で活躍できます。
アーク溶接作業者の目的
アーク溶接作業者は国家資格とはいえ、試験がありません。試験の代わりに計21時間の「アーク溶接等の業務に係る特別教育」と呼ばれる講習を受講することで資格を取得できます。
講習では座学講習のほか実技講習も含まれており、適切な作業を実際に学ばせることが目的となっています。
不適切なアーク溶接は、作業者の感電や火花による火災・爆発など、重大な事故につながりやすいです。適切な知識を有していないと作業者自身が怪我をする危険だけでなく、溶接物の利用者が設備不良により重大な事故に巻き込まれる可能性があります。
このため専門的な知識・技能を有していると認められた国家資格保有者しか、作業することが認められず、アーク溶接を行うためには特別教育の受講が必須となっています。
試験日・実施会場
アーク溶接等の業務に係る特別教育は全国各地で、毎月1回の頻度で実施されています。実施団体や受講料金、申し込み方法などは受講する地域などにより異なります。
受講料の目安は学科と実技併せて10,000円~20,000円ほどとなっています。
主要三都市では下記のような会場で実施されています。
■代表的な地域の特別講習開催場所と受講料金
開催地 | 受講料の例 | 主な主催団体 | 主な会場 【学科】 | 【実技】 |
東京 | 15,720円 | 東京労働基準協会連合会など | 安全衛生研修センター(別館)など | 安全衛生研修センター(別館)など |
大阪 | 10,340円 | 一般社団法人大阪溶接協会など | 大正産業会館研修室など | 学科当日に発表 |
愛知 | 17,600円(非会員) | 公益社団法人愛知労働基準協会など | 愛知製鋼技術学園教育センターなど | ポーラビルなど |
受験者数

アーク溶接作業者の受験者数は公表されておりませんが、溶接技能者認証者数は2019年時点で全国に23万4,457人存在しています。
(参考:溶接技能者認証者数の推移 - 日本溶接協会 溶接情報センター)
直近25年間では最多の有資格者数となっており、例年多数の希望者が受験しているとみられます。
金属加工の需要が高く、アーク溶接作業者の資格を希望する方が毎年一定数資格を取得しています。
試験の難易度
アーク溶接作業者は、試験がなく講習の受講で資格を取得できるため、合格率はほぼ100%となっています。また18歳上であればだれでも受験できます。また一度資格を取得後は更新の必要がありません。
不合格は少ないとはいえ、講習をしっかり聞かないと後々に大きな事故を引き起こす恐れがあるため、講習をしっかり聞いて知識を身に付けられるようにしましょう。
試験内容
アーク溶接作業者の特別教育はおもに2日間で11時間の学科講習・10時間の実技講習の、3日間で計21時間の講習を実施します。主に下記のような講習を受けます。
■アーク溶接作業者特別教育の講習内容(計21時間以上)
- アーク溶接等に関する知識(1時間)
- アーク溶接装置に関する基礎知識(3時間)
- アーク溶接等の作業の方法に関する知識(6時間)
- 関係法令(1時間)
- アーク溶接装置の取扱い及びアーク溶接等の作業の方法(10時間)
それぞれについて紹介します。
アーク溶接等に関する知識

「アーク溶接等に関する知識」では主にアーク溶接等の基礎理論や電気に関する基礎知識を学びます。どのような原理で溶接されるか、電気で熱を発する仕組みなど基本的なことを学びます。
アーク溶接装置に関する基礎知識
「アーク溶接装置に関する基礎知識」では主に、アーク溶接で使用する機器や配線、安全装置などについて学びます。
アーク溶接では「直流アーク溶接機」「交流アーク溶接機」「交流アーク用自動電撃防止装置」「溶接棒等および溶接棒等のホルダー配線」など様々な器具を用いて溶接します。
これらの使い方や違いを学び、道具を使い分けて適切な作業を行えるようにします。
アーク溶接等の作業の方法に関する知識
「アーク溶接等の作業の方法に関する知識」では、点検整備から実際の溶接作業、作業後の処置、災害防止策まで学びます。実務に近い内容になるため、聞き逃しのないようにしましょう。
関係法令
「関係法令」では、法令及び安衛則中の関係条項などについて学びます。労働安全衛生法など、アーク溶接業務に係る法令を学び、業務中に違法行為が発生しないようにします。
アーク溶接装置の取扱い及びアーク溶接等の作業の方法
「アーク溶接装置の取扱い及びアーク溶接等の作業の方法」は実技講習です。作業前の点検整備や溶接、溶断等の方法、溶接部の点検、作業後の処置、災害防止など「アーク溶接等の作業の方法に関する知識」で学んだことを実際に行います。
資格が役立つ場面
アーク溶接の資格は主に金属加工を行う仕事で活躍します。自動車や鉄道車両、航空機・船舶など、金属を接合するためにアーク溶接の技術が生かされます。
またそれ以外にも建設作業や解体作業などにおいても重宝される資格です。
アーク溶接作業者は比較的簡単に取得できるため、誰でも挑戦しやすい国家資格であることが特徴です。
おすすめ勉強方法
アーク溶接作業者は、試験がなく、講習の受講のみで資格を得ることができるので、受講前に試験対策を行う必要がありません。とはいえ全く勉強しなくてもよいというわけではないので、おすすめの勉強方法を紹介します。
学科試験の勉強方法
アーク溶接作業に関する書籍は多数出版されているので、講習前に一度目を通しておくと、講習の内容が身に付きやすくなります。何冊も購入する必要はないので、下記の書籍を一冊購入し、予備知識を蓄えておきましょう。
まとめ

ここまでアーク溶接作業者の資格取得方法や活躍の場所について紹介しました。アーク溶接作業者は国家資格にも関わらず、講習の受講のみで資格を取得できます。合格率もほぼ100%と、よほど講習中に居眠りなどしないかぎり不合格にはなりにくい資格です。
その反面必要となる場面は多いので、溶接作業者がまず取得する資格となっています。記事を参考にして、アーク溶接作業者の資格を取得し、就職の選択肢を広げましょう。