調剤薬局事務の資格の難易度
目次
安定性が高く、転職するときにも有利だということで人気の高い資格に、調剤薬局事務があります。全国どこでも働くことができて、引っ越しなどのライフスタイルの変化にも柔軟に合わせた働き方ができると女性から大きな注目を集めているのです。
ここでは調剤薬局事務職に就くために役立つ資格取得について紹介していきます。
調剤薬局事務とは

調剤薬局事務とは、医師から処方された薬を受け取る「調剤薬局」における受付や会計、レセプト(調剤報酬明細)の作成業務など事務作業全般を担当する仕事のことです。これ以外にも、処方せんを持って来た患者への接客対応や薬剤師のサポート業務など多岐に渡ります。
調剤薬局は全国にあるため、引っ越しをしても自宅の近くで仕事を探すことが可能です。また、正社員やパートなど幅広い就業形態があり、都合に合わせた働き方ができるため「家事や育児と両立しやすい」と女性に人気の高い職業でもあります。
調剤薬局事務の目的
調剤薬局事務の資格を取得すると、以下の知識があることを証明することができます。
医師が処方した保険薬についての知識や保険請求などの事務処理能力が主になります。ドラッグストアなどで活躍できる「登録販売者資格」とは全く別の資格だということは理解しておきましょう。
試験日・実施会場
調剤薬局事務の資格には、いくつかの「民間資格」が存在しています。ここでは調剤薬局事務の資格の中で最も知名度が高い「技能認定振興協会(JSMA)」によって認定される「調剤事務管理士」を例に挙げて試験の内容等を説明していきます。
- 試験日:年6回(奇数月第4土曜日に実施)
- 実施会場:在宅受験(※現在、新型コロナウイルスの影響で在宅受験のみ)
- 受験料:6,500円(税込)(学科・実技)
- 受験者数:公表なし
試験の難易度
「調剤事務管理士」の試験では、各種資料を参考にしたり、計算機などを使用したりして答案を作成することが正式に認められています。この点を考慮して効率的に学習に取り組むことが大切です。
では、改めて合格基準を見ていきましょう。
- 合格基準
1. 実技試験/点検・作成問題ごとに約60%以上の得点をし、且つ、3問の合計で約85%以上 2. 学科試験/約85点以上 |
※実技・学科ともに合格基準に達した場合に合格と判定します。
引用:調剤事務管理士®技能認定試験 | JSMA 技能認定振興協会
- 合格率:平均は60%前後
参考までに、過去6回分の合格率を掲載しておきます。合格率が80%を超える実施月があることからも比較的合格率の高い試験だと言えるでしょう。
実施年月 | 合格率 |
2020/11 | 75.0% |
2020/09 | 79.9% |
2020/07 | 83.0% |
2020/05 | 64.9% |
2020/01 | 72.3% |
2019/11 | 63.8% |
試験内容

試験内容や出題範囲については、以下の通りです。
- 試験内容
1. 実技試験/調剤報酬明細書の点検1問・作成2問 2. 学科試験/マークシート(択一式)・・・10問 |
- 出題範囲
1. 実技試験/ 調剤報酬明細書を点検・作成するために必要な知識 2. 学科試験/ 法規(医療保険制度、調剤報酬の請求についての知識)、調剤薬局請求事務(調剤報酬点数の算定、調剤報酬明細書の作成、薬剤用語についての知識) |
引用:調剤事務管理士®技能認定試験 | JSMA 技能認定振興協会
在宅受験の場合は、自宅でテキスト、ノート等の資料や計算機を使用して答案作成を行うことができます。
法規(出題分野)
調剤薬局事務の実務において、医療保険制度や公的負担医療制度等などを知識として知っておくことはとても大切です。調剤薬局事務は医療従事者になるので、必ず守らなければならない義務が生じます。これらの基本的な知識を学ぶことで、正しく保険請求事務ができるようになるのです。
【問題例】
調剤薬局事務員には、医療従事者として医師・薬剤師と同様に守らなければならない事項があります。厚生労働省通知の「診療情報の提供等に関する指針」の中で定めている義務を1つ選びなさい。
A.業務上知り得た「患者及び調剤等の秘密」を他人に漏らしてはならない。 B.調剤報酬算定に関する通達や情報は、しっかり把握しておかなければならない。 C.受付で得られた患者情報は、必要に応じて薬剤師に漏れなく伝えなければならない。 D.処方せんの内容を正しく理解し、誤りのない調剤報酬を算定しなければならない。 E.薬剤師が患者に話している薬の情報は、しっかり理解しなければならない。 |
調剤薬局請求事務(出題分野)

調剤薬局事務は、処方せんや調剤録管理業務も裏方として行っています。1つの薬において剤形が複数あるなど、正しく調剤報酬を計算するために薬の知識は必要不可欠です。また薬によっては1カ月の処方量が決められているものなど、細かな決まりもあります。
調剤することはありませんが、薬局で働く上で薬について学ぶことは大切なのです。
【問題例】
次の章の(1)~(4)に入る最も適切なものを[ ]より選びなさい。
薬剤の剤形にはさまざまな種類があり、中でも錠剤が一番多く使用されている。内服薬では口中で噛み砕いて服用する( 1 )などがあり、外用薬では頬側部の口腔粘膜から吸収される( 2 )、口中で徐々に溶解させて咽頭などに適用する( 3 )、舌下部の鉱区粘膜から速やかに吸収される( 4 )などがある。
A.舌下錠 B.カプセル錠 C.チュアブル錠 D.含嗽剤 E.トローチ剤 F.パップ剤 G.バッカル剤 H.リニメント剤 |
資格が役立つ場面
調剤薬局事務の仕事は資格が無くても働くことは可能ですが、やはり処方薬や保険に関して専門的な知識がある方が働きやすいようです。特にレセプト(調剤報酬明細)の作成や、保険や調剤報酬の計算など専門的な知識が必要な場面では資格の取得は大いに役立ちます。
おすすめ勉強方法
今回紹介した「調剤事務管理士」の試験は、受験資格は問わないので独学で勉強して試験を受けることが可能です。「調剤事務管理士」の学習方法として、テキストを学習して過去問題を解く方法があります。他資格では、主催する団体が提供しているカリキュラム(講座)を受けなければ試験を受けることができません。そのため、通学または通信教育で学習する必要があり、講座受講費用も必要になります。
テキスト
テキスト選びのコツは、自分の理解度に合わせてテキストを使い分けることです。
「未経験だけど資格を取りたい!」という方は、まず薬局の仕組みや保険制度、調剤報酬など初歩的なことから覚えていく必要があります。そこでこれから調剤薬局事務について学習を始めようとしている方におすすめの一冊を紹介します。
図や表を使いながら詳しく解説してあるので分かりやすく、演習問題も付いています。また、レセプトの作成例が付いているので演習問題の練習もでき、安心して試験に臨めます。調剤薬局事務として必要な知識や接客方法まで独学でもしっかり学ぶことができるテキストです。
過去問・問題集
「調剤事務管理士」の過去問題集は、株式会社ソラストが運営する「ソラスト教育サービス」において販売されています。電話またはオンラインショップで購入可能です。
- 調剤試験問題集 解答と解説 2,139円(税込)
先ほど紹介したテキストで覚えた知識が定着しているのか、自分の苦手分野はどこか、など確認するために過去問題を解くことは効果的です。一度の受験で合格を狙うなら過去問題で自分の弱点をしっかり克服しておきましょう。
まとめ

調剤薬局事務の仕事は、ライフスタイルの変化に合わせて就業スタイルを選べることも多く、特に女性に人気の高い職業です。資格がなくても働けますが、資格を取得することでより専門的な知識が必要な業務でもスムーズに取り組むことができます。在宅受験も可能なので、育休中のスキルアップや転職活動の一環としてもおすすめです。手に職をつけることができる調剤薬局事務の資格を取得して、安定した職業への転職を目指しましょう。