ITパスポートの資格の難易度は?取得方法やメリットを解説
目次
近年IT市場の発展はめまぐるしく、私たちの生活の至るところにIT技術が使われています。そのため、パソコンスキルが必要となる仕事が多く、ITに関する知識があるかどうかは、企業側にとってひとつの指標となっています。
ここでは、そんなITに関する知識に関する試験「ITパスポート」についての概要や、受験方法、難易度や、資格を取得することのメリットについて解説します。
ITパスポートとは

「ITパスポート」は、ワードやエクセル、パワーポイントなどのソフトが扱えるかどうかというのではなく、パソコンの仕組みを基礎から学ぶことが目的です。スキルアップのための資格というよりは、ITエンジニアを目指したい全くの初心者の人が学問として知識を深めることができる資格だと言えるでしょう。
ITエンジニアを目指す人の入門編といった位置づけだと考えれば分かりやすいかもしれません。
ITパスポートの目的
ITパスポートは「iパス」とも呼ばれますが、ITを利活用するすべての人を対象に、ITに関する基礎的な知識を有していることが証明できる国家試験です。
具体的には、以下の知識を総合的に問われます。
- AIなどの新しい技術や、アジャイルなどの新しい手法に関する基礎知識
- 経営全般(経営戦略、マーケティング、財務、法務など)の知識
- IT(セキュリティ、ネットワークなど)の知識
- プロジェクトマネジメントの知識
試験日・実施会場
試験自体は、各都道府県で月に1~4回程度随時行われています。
会場により異なりますが、午前・午後・夕方の3つの時間帯で実施しているため、受験するチャンスは多いです。試験はCBT方式で、パソコンを使った試験となります。試験時間は120分ですが、試験時間内であれば遅刻したからといって試験が受けられないということはありません。
受験料は5,700円です。
受験者数
ITパスポートの受験者数は以下の通りで、増加傾向にありますが、2019年は受験者数が落ち込んでいるようです。
実施年 | 受験者数 |
2015 | 73,185 |
2016 | 77,765 |
2017 | 84,235 |
2018 | 95,187 |
2019 | 54,192 |
受験者はIT関連に勤める社会人、専門外の社会人、これから社会人になる学生など、IT業界に興味のある人が大半を占めているようです。
試験の難易度
ITパスポートには何級などのグレードはなく、ITパスポート自体はその他のIT関連の試験のなかでは入門レベルに位置付けされています。ITパスポートの合格率は50%前後なので、難易度はさほど高くないことがうかがえます。
実施年 | 合格率 |
2015 | 47% |
2016 | 48% |
2017 | 50% |
2018 | 51% |
ただし、合格率の内訳を見ると、学生と社会人では経験を積んだ社会人の方がITパスポート取得には有利なようです。
また、合格ラインは、各3分野で300点以上/1,000点(総合評価の満点)を獲得したうえで、総合評価が600点/1,000点以上となっています。
試験内容

試験はパソコンを使って行われ、出題方式は、四肢択一です。
試験内容は、ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3分野に分けられ、小問が100問あります。
問題数(計100問) | 問題種別 |
ストラテジ系 35問程度 | 企業と法務、経営戦略やシステム戦略 |
マネジメント系 20問程度 | 開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント |
テクノロジ系 45問程度 | 基礎理論、コンピュータシステム、技術要素 |
では、それぞれの分野の出題傾向や過去問を見ていきましょう。
ストラテジ系
1 | 企業と法務 | 1 | 企業活動 |
2 | 法務 | ||
2 | 経営戦略 | 3 | 経営戦略マネジメント |
4 | 技術戦略マネジメント | ||
5 | ビジネスインダストリ | ||
3 | システム戦略 | 6 | システム戦略 |
7 | システム企画 |
企業活動や関連業務の知識、また業務上の問題の解決を図るためのシステム的な考え方ができるかどうかが問われます。例えば、以下のような問題が出題されているので参考にして下さい。
【平成29年春期】 PPM(Product Portfolio Management)の目的として,適切なものはどれか。 ①事業を”強み”、”弱み”、”機会”、”脅威”の四つの視点から分析し、事業の成長戦略を策定する。 ②自社の独自技術やノウハウを活用した中核事業の育成によって、他社との差別化を図る。 ③ 市場に投入した製品が”導入期”、”成長期”、”成熟期”、”衰退期”のどの段階にあるかを判断し、適切な販売促進戦略を策定する。 ④複数の製品や事業を市場シェアと市場成長率の視点から判断して、最適な経営資源の配分を行う。 |
ストラテジ系の分野では、企業活動、法務、経営戦略マネジメントの出題頻度が高いようです。
マネジメント系
1 | 開発技術 | 1 | システム開発技術 |
2 | ソフトウェア開発管理技術 | ||
2 | プロジェクトマネジメント | 3 | プロジェクトマネジメント |
3 | サービスマネジメント | 4 | サービスマネジメント |
5 | システム監査 |
マネジメントの分野では、業務の分析やシステム化の支援を行うために,情報システムの開発及び運用に関する知識を有していることが求められます。例えば、以下のような出題がありました。
【平成24年秋期】 プロジェクトの例として、最も適切なものはどれか。 ①銀行では、ATMの定期点検を行う。 ②工場では、生産実績に関する月次の報告書を作成する。 ③商店では、人気のある商品の仕入量を増やす。 ④ソフトハウスでは、大規模なオンラインシステムを新規に開発する。 |
マネジメント分野では、システム開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント出題頻度が高いようです。
テクノロジ系
1 | 基礎理論 | 1 | 基礎理論 |
2 | アルゴリズムとプログラミング | ||
2 | コンピュータシステム | 3 | コンピュータ構成要素 |
4 | システム構成要素 | ||
5 | ソフトウェア | ||
6 | ハードウェア | ||
3 | 技術要素 | 7 | ヒューマンインタフェース |
8 | マルチメディア | ||
9 | データベース | ||
10 | ネットワーク | ||
11 | セキュリティ |
利用するデバイスやシステムを理解するためにコンピュータシステム・データベース・ネットワーク・情報セキュリティに関する知識があり、オフィスツールを効果的に活用できるレベルが望ましいでしょう。
新しい技術(AI,ビッグデータ,IoT)や新しい手法(アジャイルなど)の知識があることも求められます。
出題例としては、以下の通りです。
情報セキュリティ基本方針、又は情報セキュリティ基本方針と情報セキュリティ対策基準で構成されており、企業や組織の情報セキュリティに関する取組みを包括的に規定した文書として、最も適切なものはどれか。 ①情報セキュリティポリシー ②情報セキュリティマネジメントシステム ③ソーシャルエンジニアリング ④リスクアセスメント |
テクノロジ系では、セキュリティ、ネットワークの出題頻度が高いようです。
資格が役立つ場面

ITパスポートは、国が認めている国家資格なので、履歴書に記載できる資格です。これからIT関連の職業に就きたいと考えている場合、ITの基礎を理解していることを企業にアピールできるため、IT業界への就職や転職の際に有利となります。
また、ITはどんな業種においても導入されているため、IT業界以外への就職でも重宝されるでしょう。
おすすめの勉強法
情報系の学部出身の方や、IT系の職種に就いている方にとっては、ストラテジ系とマネジメント系の対策で済むため、30〜40時間の学習で合格を目指せます。一方で全くITの知識がないのであれば、100時間ほどの学習時間が必要でしょう。
通信制の講座や、専門のスクールに通うこともできますが、独学でも十分合格レベルに持っていけます。独学で勉強する場合、テキスト・過去問などの問題集を使う・動画を利用するなどの方法があります。
テキスト
まずはテキストをしっかり読みましょう。一度は最後まで通読し、概要を理解することが大切です。次に、わからなかった部分を重点的に、テキストを再度読み込んでください。
独学の場合、出題傾向などを指導する人がいないので、分からない箇所を都度聞くことができず、一度躓くと、モチベーションがさがってしまうこともあるかもしれません。読む回数が増すほどに知識が深まるので、くじけずに何度か繰り返し読み進めることが重要です。
ITの基礎知識がほとんどなく初心者に近い人は、まずはテキストを読むところから勉強を始めましょう。おすすめのテキストは以下の通りです。
おすすめのテキスト ●令和03年 イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生のITパスポート試験教室 ●キタミ式イラストIT塾 ITパスポート 令和03年度 |
過去問・問題集

テキストを読んである程度、基礎知識が身についてきたら、過去問演習に挑戦しましょう。ITパスポート試験はまだ歴史が浅いので、過去問の数が十分ではありません。予想問題などと並行して進めていくと良い対策になります。
自分の苦手な分野や間違えやすい箇所を重点的に復習しながら、問題を解いていきましょう。
ある程度IT知識がある人は、過去問や問題集から始め、苦手な分野を埋めていく勉強方法がおすすめです。過去問題集としては以下のようなものがあります。
おすすめの過去問・問題集: ●かんたん合格 ITパスポート過去問題集 令和2年度春期 ●よくわかるマスター 令和2-3年度版 ITパスポート試験 対策テキスト&過去問題集 ●令和02年 上半期 ITパスポート パーフェクトラーニング過去問題集 |
動画
参考書を購入すると、1冊3,000円程度かかります。できる限りコストを抑えたいのであれば、YouTubeでも学習が可能です。
ただし、動画の場合、信用できる動画であるかどうかの見極めが大切です。出題範囲をきちんと網羅しているものを見つける必要があります。場合によっては出題範囲に対し内容が不足する可能性もあるでしょう。そのため、補足的に動画を視聴すると効率的に勉強が進められるでしょう。
テキストでは理解しきれなかった部分がある場合に、わかりやすく解説しているコンテンツを探して活用するのがおすすめです。
おすすめの教材動画 ●ITパスポート講座_イントロダクション |
まとめ

ITパスポート試験は国家資格であり、ITの基礎知識を有していることを証明できる資格です。IT業界はこれからも拡大傾向にあります。これから社会にでる学生はもちろんのこと、社会人の方もぜひITに関する基礎知識を習得し、自身の知識やスキルを磨くのに役立ててください。