派遣社員が失業保険を受給する条件とは?給付額、受給手続きの準備物と流れも解説
目次
仕事を辞めたとき、生活の安定や再就職のために手当を受けられる失業保険。「派遣社員でも仕事を辞めて失業保険はもらえるの?」と疑問に思う人も少なくありません。失業保険は正社員だけというイメージを持たれることも多いですが、一定の条件を満たしていれば、派遣社員として働く人でも失業保険が受けられます。これから転職を考えている人は、失業保険が受け取れる条件や給付額、手続きについて事前に確認しておきましょう。
失業保険とは

失業保険とは、労働者が失業したときに、生活の安定や再就職支援を目的とした公的保険制度のひとつです。正式には「雇用保険」といい、会社で勤務している場合には、保険料が給与から天引きされているのが一般的です。リストラなど会社都合による失業だけでなく、自己都合での退職の場合でも、失業保険に加入していれば給付が受けられます。
「より良い職場に転職をしたい」「理由があって仕事を辞めたい」と仕事を辞めようか考えている人も多いと思いますが、その後の生活が不安で、転職に踏み切れないという人も少なくありません。生活が安定せず、次の就職先が見つからなかったり、正社員を希望しているものの、生活費を稼ぐためにアルバイトを選んだりと、思うような転職活動ができない可能性もあるでしょう。
この失業保険は、仕事を辞めた人が生活の心配なく新しい仕事を探し、1日でも早く再就職できるよう支援するという目的があります。しかし、失業手当は離職したすべての人が受け取れるわけではありません。受給するには一定の条件を満たす必要がある他、受給金額や期間は人によって変わるため、事前に確認しておくことが重要です。
失業保険を受給するための条件

失業保険を受給するためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
- 雇用保険に加入している
- 雇用保険の加入期間が条件を満たしている
- 就職する意思がある
失業している状態であっても、すべての人が受給できるわけではありません。離職前の勤務先で雇用保険に加入しており、かつ一定の条件を満たした人が対象となります。離職後にすぐに転職を行う、就職する意思がない場合などは対象とはならないため注意しましょう。
雇用保険に加入している
失業保険を受給するには、前提として離職前の勤務先で雇用保険に加入している必要があります。雇用保険は、『雇用保険の適用事業所で31日以上の雇用見込みがある人、かつ週20時間以上勤務する人』であれば加入の対象となります。ただし、雇用保険に加入している場合でも、その加入期間が条件を満たしていなければなりません。「先月初めて雇用保険に入ったばかり」などの人は、受給対象とならないため注意が必要です。
雇用保険の加入期間が条件を満たしている
失業手当を受給するには、雇用保険に加入していて、かつ加入期間が条件を満たしている必要があります。加入期間の条件については、離職理由が「自己都合」か「会社都合」かによって異なります。それぞれ理由別に3つのパターンに分類されているため、違いを理解しておきましょう。
①一般離職者
「一般離職者」とは、自分が望んだ仕事内容や待遇を求めて転職や独立をするなど、自己都合によって退職した人のことをいいます。失業手当が受けられる加入期間の条件は、以下となります。
■雇用保険加入期間の条件
離職日以前の2年間に、雇用保険の加入期間が通算して12ヵ月以上あること
②特定理由離職者
自己都合による退職でも、正当な理由があると認められる場合には「特定理由離職者」に規定されます。失業手当が受けられる加入期間の条件は、以下となります。
■雇用保険加入期間の条件
離職日以前の1年間に、雇用保険の加入期間が通算して6ヵ月以上あること
なお、特定理由離職者として認められる人には、以下が挙げられます。
- 労働契約の期間が満了し、当該労働契約の更新がないことによって離職した人
- 体力の不足や心身の障害、負傷などによって離職した人
- 妊娠や出産のために離職して、受給期間延長措置(雇用保険法)を受けた人
- 父母の死亡や負傷のため、あるいは扶養のために離職を余儀なくされた人
- 家族の事情が急変したことによって離職した人
- 扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難になったため離職した人
退職した正当な理由については、その範囲が幅広くなっています。どの受給条件にあたるかは、ケース別にハローワークが判断することとなります。
③特定受給資格者の場合
特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇など、会社都合で離職を余儀なくされた人のことをいいます。失業手当が受けられる加入期間の条件は、以下となります。
■雇用保険加入期間の条件
離職日以前の1年間に、雇用保険の加入期間が通算して6ヵ月以上あること
※雇用保険の加入期間(被保険者期間)とは、賃金支払基礎日数が11日以上、または賃金支払基礎となった時間数が80時間以上ある月を1ヶ月として計算します。
就職する意思がある

失業手当を受けるには、離職した本人に「就職する意思がある」ことが前提です。求職の申し込みをして積極的に就職活動をしている場合や、就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても就職できない「失業の状態」にあることが条件になります。
以下のような失業の状態にある場合は、失業手当(基本手当)を受けることはできません。
- 病気やケガによってすぐに就職できないとき
- 妊娠や出産、育児のためにすぐに就職できないとき
- 定年退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などによって家事に専念するため、すぐに就職できないとき
病気やケガなど、離職がやむを得なかった正当な理由がある場合は「特定理由離職者」に認められるケースもあります。
退職理由の「会社都合」「自己都合」の違いとは

失業保険の受給条件は、退職理由が「会社都合」か「自己都合」かによって異なります。退職の理由によって受給資格を得られる条件が変わるため、自分がどれに当てはまるか確認しておきましょう。
会社都合によって退職した場合の受給条件
倒産や解雇によってやむを得ず離職した「特定受給資格者」、または正当な理由による離職と認められた「特定理由離職者」については、受給申請をしてから7日間の待機期間後に失業手当の支給が開始されます。再就職の準備をする時間がなく離職を余儀なくされたため、自己都合による退職よりも早く手当が受けられるのが特徴です。ただし、失業手当が口座に振り込まれるまで1ヶ月程かかるため注意しましょう。
派遣社員における会社都合による退職には、以下のケースがあります。
- 会社の経営状況の悪化などのやむを得ない事情により、契約満了前に解雇された場合
- 派遣の契約期間満了後、同じ派遣会社から派遣就業を希望していながら、失業の状態になった場合等
失業手当がいつまで受けられるのかといった「受給期間」については、年齢や被保険者期間によって定められています。
■会社都合による離職者の受給期間

※については補足事項があります。詳しくはハローワークをご確認ください。
自己都合によって退職した場合の受給条件
自己都合によって退職した「一般離職者」については、7日間の待機期間後、「3ヵ月の給付制限」が設けられています。受給開始となるのは、申請してから約4か月後となるため、会社都合よりも手当を受け取るまでの期間が長くなってしまいます。
派遣社員における自己都合による退職には、以下のケースがあります。
- 派遣の契約期間満了前に、派遣会社から次の派遣先を指示されながら、拒否した場合
- 派遣の契約期間満了前に、派遣会社が次の派遣先を指示せず、別の派遣会社を希望する場合等
受給期間については、被保険者だった期間によって定められています。
■自己都合による離職者の受給期間

失業保険の給付額

失業保険の給付額は、「基本手当日額×所定給付日数」で算出できます。
「基本手当日額」とは、失業手当の1日あたりの給付額のことを言います。基本手当日額は、以下の計算式で求めることができます。
基本手当日額=賃金日額(退職前6ヵ月の賃金合計÷180) × 給付率(50~80%)
また、もらえる給付額については、離職時の年齢ごとに「給付率」「基本手当日額の上限額」「賃金日額の上限額」が定められており、原則、賃金日額の50%~80%になります。ただし、60歳以上65歳未満の方については、賃金日額の45%~80%に設定されています。
年齢に応じた給付率・賃金日額・基本手当日額の上限は次のようになります。
■給付率

※賃金日額が低い人ほど、給付率が高くなります。
■賃金日額・基本手当日額の上限額

※令和2年8月1日時点
■賃金日額・基本手当日額の下限額

※令和2年8月1日時点
失業保険の受給手続きの流れ

失業保険を受給するためには、所定の手続きを踏まなければなりません。
手続きに必要なものには、以下があります。
- 雇用保険被保険者離職票
- 離職票
- マイナンバーカード
※マイナンバーカードがない場合は、身分証(運転免許証)が必要。
運転免許証がない場合は、公的医療保険の被保険者証、年金手帳、パスポートなどの2種類が必要。
- 証明写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
- 印鑑
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
「雇用保険被保険者離職票」と「離職票」については、退職後に派遣元である派遣会社から取り寄せる必要があります。
失業保険の受給手続きの流れ
手続きに必要な書類が整ったら、管轄するハローワークで手続きを行います。
受給までの流れは以下のようになります。
1.退職した会社から離職票を取り寄せる
2.必要書類や印鑑などを用意し、管轄のハローワークで受給資格の申請を行う
3.7日間の待機期間
4.各地域で指定された初回説明会に参加する
5.ハローワークで転職活動を行う
6.認定日に失業状態を申請する
7.指定口座に失業手当が振り込まれる
7日間の待機期間については、退職理由にかかわらず、すべてのケースで発生します。自己都合による退職の場合は、さらに3日間の給付制限があるため注意しましょう。なお、待機期間中の転職活動はできません。
また、受給資格の決定後は、28日間に2回以上、ハローワークでの転職活動を行う必要があります。28日おきに失業状態であるかどうかの認定が行われるため、失業が続いている人は申請しましょう。
失業手当の振込については、会社都合による離職で約1週間、自己都合による離職だと約4週間かかることを覚えておきましょう。
新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための給付日数の延長

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの企業が人員削減に乗り出しており、会社都合による解雇をはじめ、感染のためにやむを得ず退職に至った方も少なくありません。日々の安定した生活を継続し、今後の就職活動に専念できるよう、政府は失業保険の基本手当の給付に日数を延長する特例を制定しました。
令和2年6月以後に、基本手当の所定給付日数を受け終わる方は、特例措置による延長給付が可能となります。

また、以下のような理由で離職した人は「特定理由離職者」として、雇用保険の給付制限が適用されません。すでに給付制限期間中の場合でも適用となるため、新型コロナウイルス感染症の影響によって離職をやむなくされた人は、自分が該当するかどうか確認しておくようにしましょう。
(※)特定理由離職者となる場合
- 同居の家族が新型コロナウイルスに感染症に感染し、看護や介護が必要になったため自己都合で離職した人
- 本人の職場で感染者が発生した場合や、同居の家族に基礎疾患がある、あるいは妊娠中や高齢であることを理由に、感染防止や重症化防止の観点から自己都合で離職した人
- 新型コロナウイルス感染症の影響によって子供の養育が必要になり、自己都合で離職した人(小学校過程のみ・特別支援学校は高校まで)
まとめ

失業保険は、退職してから次の仕事を見つけるまでの間、生活の安定を維持できる制度です。しかし、受給資格を得るには一定の条件を満たす必要があり、雇用保険の加入期間や年齢によって給付額や給付日数が変わることに注意しなければなりません。
また、退職理由が自己都合による場合は、7日間の待機期間に加えて、さらに3ヵ月の給付制限があります。新型コロナウイルス感染症の影響でやむなく離職した場合には、給付制限が適用されない特例があるため、受給条件について事前に確認しておくことが重要です。なお、失業手当を受けるにはハローワークで所定の手続きを行う必要があります。必要な書類や手続きの流れを理解して、スムーズに申請手続きができるようにしましょう。
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