危険物取扱者の難易度や役立つシーンを紹介
目次
危険物取扱者とは、消防法で定められた危険物(火災の危険性の高い燃焼物)を取り扱う際に必要な国家資格で、年間約30万人が受験する人気資格でもあります。ガソリンや軽油、灯油を扱う所といえばガソリンスタンドが思い浮かびますが、石油会社、化学系メーカーなど大企業を含む多くの企業でも活かせる魅力的な資格です。
危険物取扱者とは

危険物取扱者という名前ですが、燃焼性の高いものを大量に「製造・貯蔵・取扱い」をする場所で必要とされる資格で、薬品・化学工場、印刷や塗料メーカーなどでとても重宝される資格です。業務としては危険物の取扱や定期点検、保安の監督などがありますが、資格(甲種・乙種・丙種)によって取り扱える危険物が異なるため、注意が必要です。
危険物取扱者の目的
「甲種危険物取扱者」は全種類の危険物を扱うことができますが、乙種、丙種ではそれぞれに扱える危険物が限られます。乙種の中にさらに第1類~第6類までの分類があり、種類を選んで受験します。丙種は乙種の第4類=引火性液体(ガソリン、灯油、軽油、エタノールなど)のみ取扱い可能な資格ですが、危険物保安監督者にはなれません。
試験日・実施会場
試験日程は前期(4月~9月)と後期(10月~3月)に分けて発表され、試験は各都道府県の一般財団法人消防試験研究センターで行われます。場所によって日程や試験回数が異なるので、自分が受験したい場所の日程を確認してください。受験申請書は書面申請と電子申請が選べるほか、現住所や勤務地に関わらず希望する都道府県で受験可能です。甲種には資格条件があるので該当者は必要書類を準備する必要があります。
受験者数
危険物取扱者には3種類あることは前述の通りですが、最も受験者数が多いのは乙種で、毎年30万人を超えています。甲種は2万人超、丙種は3万人超で、若干の増減は見られるもののほぼ安定した受験者数です。特に受験者が多いのが乙種の第4類で、危険物取扱者受験者の約7割を占めています。これを取得できれば全体の8割ほどの危険物を取り扱えるようになるというメリットがあります。そのため、工学系の学生や会社からの指示を受けて受験する人もある程度いると見られます。
試験の難易度
甲種、乙種、丙種によって受験科目や試験時間が異なりますが、いずれも3科目で、全ての科目において60%以上正解すると合格です。合格率では丙種が最も高く50%前後で、人気の乙種第4類の合格率は30~40%と厳しい数字なのですが、乙種全体では45%程度です。甲種は危険物取扱者試験の中で最もレベルの高い知識が求められ、近年の合格率平均は36%ほどとなっています。甲種、乙種の資格には立ち会いの権限が与えられますが、丙種にはありません。
試験内容

甲種の危険物取扱者試験は「危険物に関する法令」15問、「物理学及び化学」10問、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」20問の計45問となります。また、乙類危険物取扱者試験は法令が15問、物理と化学で10問、危険物の性質や消火の方法で10問の計35問、丙種危険物取扱者試験は法令で10問、燃焼に関する知識が5問、危険物の性質と消火の方法で10問の計25問となります。いずれもマークシート形式で選択式となり、所要時間は甲種で2時間半、丙種で1時間15分です。
危険物に関する法令(出題分野)
最も人気の高い乙類第4種の過去問題を紹介していきます。
<乙類4種 過去問> 法令上、学校、病院等の建築物等から一定の距離(保安距離)を保たなければならない旨の規定が設けられている施設の組み合わせで、次のうち正しいものはどれか。 1 製造所 屋外タンク貯蔵所 2 屋内タンク貯蔵所 地下タンク貯蔵所 3 地下タンク貯蔵所 給油取扱所 4 移動タンク貯蔵所 第2種販売取扱所 5 製造所 第1種販売取扱所 |
法令は危険物を取り扱うにあたって知っておくべき基礎的知識(正解は5)で、択一式なので、正確に覚える必要があります。
基礎的な物理学及び基礎的な化学(出題分野)
<乙類4種 過去問> 次の消火剤に関する説明のうち、誤っているものはどれか。 1 泡消火剤は、微細の気泡の集合体で燃焼面を覆う窒息効果と、水分による冷却効果によって消火する。 2 二酸化炭素消火剤は、主として酸素濃度を下げる窒息効果によって消火する。 3 水は、蒸発熱により燃焼物の温度を下げる冷却効果によって消火する。さらに気化により発生した水蒸気による窒息効果もある。 4 粉末消火材は、燃焼の連鎖反応を中断させる負触媒(抑制)効果によって消火する。 5 ハロゲン化物消火剤は、主として燃焼物の温度を引火点以下に下げる冷却効果によって消火する。 |
物理化学の正しい知識を問う問題で、かつ、消火に関連する問題は出題される頻度も高く重要です(正解は5)。
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(出題分野)
<乙類4種 過去問> 第1石油類を貯蔵および取り扱う場合の火災予防について、次のうち誤っているものはどれか。 1 静電気の発生を少なくするために、危険物を取り扱う場合の流動、ろ過などは短時間に速度を上げて行う。 2 液体から発生する蒸気は、地上をはって離れた低いところにたまることがあるので、周囲の火気に気をつける。 3 取扱作業をする場合は、電気絶縁性のよい靴やナイロンその他の化学繊維などの衣類は着用しない。 4 貯蔵および取り扱いは、換気を十分に行う。 5 貯蔵倉庫内の電気設備は、すべて増爆構造のものを使用する。 |
正しいものを選ぶ場合と、誤っているものを選ぶ場合があるので注意が必要です。特に燃焼性の高いものを扱うので、それぞれの性質や特徴を問う問題も、多く出題される傾向があります(正解は1)。
資格が役立つ場面

危険物取扱者は国家資格であり、実用性が高いのでニーズが高く、社会的な評価も高い資格です。専門性が高いので種類が細分化されていますが、受験資格が特になく受けられる乙種は、1つの免状を取得した後は受験科目が1科目となるので、スキルアップも目指しやすいのが特徴です。転職の際も特に製造関連では強みとなり、将来のキャリアアップも望めます。
おすすめ勉強方法
通信講座などの活用と独学がありますが、基本的にはよい教材を使い、必要事項をしっかり暗記することが必要です。物理や化学が苦手だった人にとっては少しハードルが高いでしょうが、その分腹をくくって取り組みましょう。特に受験者数が多い乙種第4類は独立したテキストもたくさん出ており、過去問集も活用しましょう。
テキスト
個人差はあるものの、元々理系を勉強してきた人には法令重視のもの、文系を得意とする人には物理・化学重視のテキストがおすすめです。人気の乙種第4類受験(丙種にも使える)には、『乙種第4類危険物取扱者速習レッスン』が、その他の乙種には『乙種第1・2・3・5・6類 危険物取扱者速習レッスン』などが人気で、よく読んで理解し、必要な事項は暗記する必要がありますが、独学ではどうしても不安という人や、続かないという人は、通信講座の活用をおすすめします。
過去問・問題集
過去1回分の問題は消防試験研究センターのHPに掲載されていますが、公式過去問集はありません。甲種受験には『甲種危険物取扱者試験』、乙種第4類としては『乙種第4類危険物取扱者試験』『過去問パターン分析!乙種第4類危険物試験 解法ガイド』などがおすすめで、いずれも最新刊を入手しましょう。問題と答えを丸暗記するのでは合格は叶いませんので、とにかく繰り返し解き、自分の弱いところを克服します。
まとめ

危険物取扱者は国家資格で実用性の高い資格であることから、大手を含む多くの企業でニーズの高い資格です。資格の種類は多いものの甲種以外は受験資格を問われないことから、自分の努力で順次幅を広げ、スキルアップが図れるのも魅力です。希望の就職、転職に向けて、挑戦してみてください。ただ、危険物を扱う資格なので、責任やリスクも伴うことは理解しておく必要があります。
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