電気工事士の難易度や役立つシーンを紹介
目次
就職活動や転職活動のときになにか資格があると有利です。ただ「どんな資格なら有利になるのだろう」「就職に困らない資格はどれだろう」と悩んでしまいます。数ある資格の中でも、電気工事士は需要が多く、おすすめの国家資格です。
電気工事が必要になる場面は多く、一般住宅から工事現場、大型のビルメンテナンスまで、様々な就職先があります。また電気工事がなくなることは当面なく、将来的にも就職口に困る心配の少ない仕事です。
この記事では電気工事士の資格取得のための受験方法や難易度、試験の内容や対策を紹介します。
電気工事士とは

電気工事士とは電気設備の安全を守るために、電気工作物や工事に関する専門的な知識を有する人のことを指します。
電気工事士の資格は国家資格で、国に認められた資格です。無資格の人が作業を行うと電気工事士法違反となり、罰金や懲役刑を科せられる場合もあります。例えば電線から電気を引き込む作業などは電気工事士の資格が必要です。
一般住宅や商店だけでなく、建設現場での電気工事やビルメンテナンス、鉄道電気工事など電気工事が必要な場面は非常に多いです。求人も多いうえに定年もないため、資格を取得できれば“手に職”をつけて長く活躍できる資格です。
電気工事士の目的
電気工事士の資格を保有すると、電気工事に関する専門的な知識と技能を有すると認められたことになります。
電気工事は“独占業務”といい、特定の資格を持つ人しか作業ができません。電気工事は、誤った知識で作業を行った場合に感電や火災事故などの危険があることから、電気に関する専門知識を有した人しか作業ができないようになっています。
電気工事士には第一種・第二種の2種類があり、下記のように作業できる範囲が異なります。
資格の種類 | できる作業 |
第一種電気工事士 | 小規模工場やビル(最大電力500kW未満の設備)の電気工事 一般住宅や小規模店舗など(一般用電気工作物)の電気工事 |
第二種電気工事士 | 一般住宅や小規模店舗など(一般用電気工作物)の電気工事 |
第一種のほうが難易度は高いですが、人数も少ないうえに業務の幅も広く、安定した給与をもらえるようになります。
電気工事士の資格試験では電気に関する基礎知識や施工方法、一般電気工作物の検査方法から一般電気工作物の保安に関する法令まで、幅広く出題されます。試験に合格した者のみが、電気工事に関して専門的な知識や技能を持つと認められ、実際に働くことができるようになります。
試験日・実施会場
電気工事士の試験は筆記試験と技能試験に分かれて実施されます。
第二種は上期(筆記試験5月・技能試験7月)と下期(筆記試験10月・技能試験12月)の年2回試験が実施されますが、第一種は筆記試験10月・技能試験12月の年1回しか開催されません。
令和3年度(2021年度)の試験の実施予定は下記のように決定されています。
■令和3年度(2021年度)の電気工事士試験の実施日程
第一種 | 第二種 | |||
上期 | 下期 | |||
筆記試験 | 10月3日 | 5月30日 | 10月24日 | |
技能試験 | 12月12日 | 7月17日または7月18日 | 12月18日または12月19日 | |
受験申込受付期間 | 6月14日~7月1日 | 3月22日~4月8日 | 8月16日~9月2日 | |
受験手数料 | インターネットによる申し込み | 10,900円 | 9,300円 | |
郵便申し込み | 11,300円 | 9,600円 |
試験は平成30年度(2018年)から全国47都道府県で開催されるようになりました。試験会場は1都道府県ごとに1か所~複数か所設定され、受験票に試験会場が記載されます。
受験申込期間は第一種、第二種ともに2週間ほどしかないので、受験予定の方は期日を過ぎてしまわないように気をつけてください。
また2020年は新型コロナウイルスの影響で第二種上期試験の筆記試験が中止となりました。2021年度も例年通り開催されるかどうは未定なので、主催団体である一般財団法人電気技術者試験センターの試験日程のご案内のページをチェックして情報に更新がないか確認しておくようにしましょう。
受験者数

電気工事士の受験申込者数は第二種が上期・下期合計で年間約15万人、第一種は年間約5万人が受験しています。さらに年々受験者数は増加しており、平成30年度には初めて第二種の受験者数が17万人を超えています。
■電気工事士試験の受験者数の推移

試験実施状況の推移(第二種電気工事士試験) | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
近年は省エネ需要などで太陽光パネル(ソーラーパネル)の取付作業などで需要が大きく、受験者が増えている傾向にあるとみられます。電気が不要になることは今後考えられないので、電気工事士の受験者数は高い水準で伸びていくことが予想されます。
試験の難易度
電気工事士の第二種試験の合格率は筆記試験が平均約58%、技能試験が平均約71%となっています。第一種合格率は筆記試験が平均約45%、技能試験が平均約65%です。


これは一般的な国家資格試験と比べて、合格率が高い部類に含まれます。
例えば同じ国家資格の保育士の試験合格率は約20%、危険物取扱乙種(第1~6類合計)の合格率は40%前後なので、第二種電気工事士資格は比較的取得しやすい国家資格と言えます。
また第二種電気工事士は受験資格に制限がなく、何歳でも受験が可能です。しっかり資格取得のための勉強をし、対策を行えば、未経験の方でも取得しやすくなっています。
試験内容

試験では第二種・第一種それぞれ下記の内容が問われます。
■第二種電気工事士筆記試験の出題内容
(1)電気に関する基礎理論 (2)配電理論及び配線設計 (3)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具 (4)電気工事の施工方法 (5)一般用電気工作物の検査方法 (6)配線図 (7)一般用電気工作物の保安に関する法令 |
■第二種電気工事士技能試験の出題内容
(1)電線の接続 (2)配線工事 (3)電気機器及び配線器具の設置 (4)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 (5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け (6)接地工事 (7)電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定 (8)一般用電気工作物の検査 (9)一般用電気工作物の故障箇所の修理 引用:第二種電気工事士試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター |
■第一種電気工事士筆記試験の出題内容
(1)電気に関する基礎理論 (2)配電理論及び配線設計 (3)電気応用 (4)電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 (5)電気工事の施工方法 (6)自家用電気工作物の検査方法 (7)配線図 (8)発電施設・送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 (9)一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安に関する法令 |
■第一種電気工事士技能試験の出題内容
(1)電線の接続 (2)配線工事 (3)電気機器・蓄電池及び配線器具の設置 (4)電気機器・蓄電池・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 (5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け (6)接地工事 (7)電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定 (8)自家用電気工作物の検査 (9)自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理 引用:第一種電気工事士試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター |
いずれも筆記試験はマークシートによる四肢択一方式、技能試験は持参した作業用工具を使い、配線図で与えられた問題について、一定時間内に完成させる方法をとります。基礎知識だけでなく、実務に近い応用的な技能が問われます。
次項で2020年10月に実施された第二種電気工事士試験に出題された問題を紹介するので対策を十分に行ってください。
一般問題(基礎知識)
A、B2本の同材料の導線がある。Aは直径1.6㎜、長さ20m、Bは直径3.2㎜、長さ40mである。Aの抵抗はBの抵抗の何倍か。 イ.2 ロ.3 ハ.4 ニ.5 正答:イ.2 |
一般問題は問題数30問、配点は1問当たり2点です。基礎知識が備わっているかどうかを見られていますが、中学高校レベルの物理の問題なので、勉強していれば決して難しくない問題が多いです。
合格するためにも一般問題はできるだけ点数を稼げるようにしてください。
一般問題(法令問題)
「電気工事士法」の主な目的は。 イ.電気工事に従事する主任電気工事士の資格を定める。 ロ.電気工作物の保安調査の義務を明らかにする。 ハ.電気工事士の身分を明らかにする。 ニ.電気工事の欠陥による災害発生の防止に寄与する。 正答:ニ. 電気工事の欠陥による災害発生の防止に寄与する。 |
一般問題には法令関連の設問も用意されています。法令の目的などを理解していて、適切な電気工事が可能かどうかを見られています。ただし、細かな法令内容までは出題されないことが多く、じっくり考えれば答えられる設問です。あらかじめ電気工事士法などを熟読し、落とさないようにしてください。
配線図
図は木造2階建て住宅及び車庫の配線図である。この図に関する次の各問いには4通りの答え(イ、ロ、ハ、ニ)が書いてある。それぞれに対して、答えを1つ選びなさい。 ①で示す図記号の器具の種類は。 イ.シーリング(天井直付) ロ.ペンダント ハ.埋め込み器具 ニ.引掛シーリング(丸) 正答:イ.シーリング(天井直付) |
別添で配線図が示されており、各番号で示す図記号の意味や目的、正しい使い方などを回答させる設問です。
問題数は20問、配点は1問当たり2点です。配線図について正しく理解していないと回答できない問題です。実際に作業するにあたり、必ず必要になる知識を有しているかどうかが重要になります。
問題集や過去問でできるだけ多くの配線図を見て、全て理解できるようにしておきましょう。
技能試験問題

指定の材料や施工条件などに従い、与えられた工事を完成させる試験です。試験時間は40分で、工事を完了させなければいけません。出題意図通りの作業ができるかどうか、施工条件通りに作業できるかどうか、作業の正確性やスピードなども見られます。
時間も限られているので、落ち着いて配線図を正しく読み取り、施工条件から外れてしまわないよう、正確に作業をすることを心がけてください。
資格が役立つ場面
第二種電気工事士の資格を取得できると下記のような様々な電気工事に携われるようになります。
- 戸建て住宅
- 小規模なオフィス、工場
- 小規模な商店
- 家庭用太陽光発電設備の施行
- 家庭用燃料電池発電設備
配線や配電盤、電気設備の設置や交換、撤去など、電気を使う様々な作業が可能になります。また電気工事会社などへの就職口も開け、電気工事士として独立することもできます。
身近なところでは、電気系統の作業が可能になるので自宅のDIYなどの幅も広げられます。仕事に関係なく、DIY目的で資格を取得する人も中にはいるようです。
電気が必要ない家屋、建物はほぼないといっても過言ではないため、資格取得で活躍できる場所が格段に広がります。
おすすめ勉強方法
電気工事士の資格取得に向けて、勉強法の基本は座学が中心になります。技能試験があるとはいえ、電気工事は危険が伴うため、実際に電気系統を操作して勉強することはやめてください。
電気工事士の受験者数は非常に多いので、テキストや過去問題がたくさん出回っています。それらを参考に、じっくり問題の意味や答えを理解して試験の準備をするようにしましょう。
テキスト
まず電気工事士の資格勉強は、参考書などのテキストを購入し、内容をしっかり理解することがおすすめです。
電気工事士の筆記試験の出題傾向は毎年ほぼ同じです。このため複雑な知識よりもひとつひとつの事柄に対する理解度の高さが重要になります。そのためにも何冊もテキストを購入するのではなく、ボリュームのある一冊をじっくり読みこんで、理解を深めるのがおすすめです。
筆記試験対策には下記の書籍の人気が高くおすすめです。
- 2021年版 ぜんぶ絵で見て覚える第2種電気工事士筆記試験すい~っと合格
- いちばんやさしい 第2種電気工事士【筆記試験】 最短テキスト&出る順過去問集 改訂新版
ただし、テキストでは実際に出題される問題までカバーしきれません。そのためテキストで電気工事に関する理解を深められたら、次に紹介する過去問で対策するのがおすすめです。
過去問
テキストを読み込んだ後は、過去5年間ほどの過去問に挑戦しましょう。先述した通り、電気工事士の試験の出題傾向は例年大きな変化がないため、過去問に取り組むことで、出題の傾向をつかむことができます。
試験の主催団体の一般社団法人電気技術者試験センターでは、過去10年間の過去問とその解答を公開しています。テキストで知識を深めたら、過去問に取り組み、試験でどんな問題が出ても正答できるようにしておきましょう。
まとめ

ここまで電気工事士の資格について紹介しました。電気工事士の難易度は高くなく、需要がある資格なので、取得するのにおすすめの資格です。またDIYなど自分のためにも使える資格なので、趣味の幅を広げたい人にもおすすめです。
試験対策のテキストなども数多く販売されているうえ、過去問も公開されているので、対策もしやすいです。しっかり勉強をしたかどうかが合格の分かれ目になるので、事前に十分試験対策の準備をして、受験に臨むようにしましょう。
正社員や派遣など、厳選した様々な求人をご紹介。仕事にまつわる様々なコンテンツも発信しています。
すべてのサービスを無料でご利用いただけるため、「初めての派遣、正社員で不安」「現在就業中で悩んでいる」「相談だけしたい」という方も、まずはお気軽にご登録ください!
■無料登録はこちら
■LINE相談はこちら
ヒトサガスは1人ひとりの「働く」を応援しています。