電子機器組立て技能士の難易度や役立つシーンを紹介
目次
電子機器組立て技能士は、電子機器の修理などに必要な知識・技能を備えた人に与えられる国家資格です。資格を持っていると、電子機器の生産ラインや工場の保守メンテナンスなどの仕事にも携われるようになります。電子機器の需要は近年どんどん高まっているので、修理などを行う電子機器組立て技能士のニーズも高まっていくものと予想されます。
電子機器組立て技能士の試験の合格率は約60%と、低くはありませんが、対策をしておかないと、合格は難しいです。この記事では電子機器組立て技能士の資格取得のために、受験方法や難易度、試験の内容や対策を紹介します。記事を参考に、電気工事士の受験対策を進めましょう。
電子機器組立て技能士とは

電子機器組立て技能士とは、電子機器の組み立てや修理に必要な知識や技能を認定する国家資格です。
パソコンやスマートフォン、テレビ、家電、卓上電子計算機などの身近な電気製品から、有線・無線通信機器、各種工業用計測器、工業用電子機器まで、電子回路を内蔵する機器に関して、回路に関する知識を持ち、実際に組立て・修理作業できる人のことを指します。
プリント配線にトランジスタ、ダイオード、ICなどを取り付けて、端子間に配線や束線を施しハンダ付けする作業を行います。精密機械など電子機器を組み立てる製造ラインや工場では需要の高い技能で、就職などにも生かせる資格です。
電子機器組立て技能士の目的
電子機器組立技能士の資格は、電子機器の組み立て・配線、修理などの知識・技能レベルの証明に役立ちます。電子機器組立技能士は知識・技能レベルによって、特級、1級、2級、3級に分けられます。
- 特級:1級合格後、経験5年以上の実務経験(管理者・監督者)
- 1級:2級に合格し、かつ実務経験7年以上(上級技能者)
- 2級:3級に合格し、かつ実務経験2年以上(中級技能者)
- 3級:条件なし(初級技能者)
3級を除き、専門的な知識だけでなく一定の実務経験年数も求められます。
電気機器組立て技能士は認知度も高い資格なので、資格等級によってスキルの証明になります。キャリアアップ・昇給にもつなげやすくなります。各等級の実務経験年数の条件を超えたら、できるだけ受験して高い等級を維持するのがおすすめです。
試験日・実施会場

電子機器組立て技能士の資格検定は、問題を中央職業能力開発協会が作成し、各都道府県の職業能力開発協会が試験を実施します。1年に1回全国47都道府県で一斉に実施されます。
例年、4月上旬に願書を提出し、学科試験が7~9月、実技試験が6~9月の指定された日に実施します。合格発表は9月上旬であることが多いです。願書の受付期間は2週間ほどであることが多いので、時期を逃さないよう注意してください。
受験料は学科試験が3,100円、実技試験が18,200円となっています。(※都道府県や受験時期により異なる場合があります。)
受験者数
平成30年度の電子機器組立て技能士の受験者数の合計は前年度比24%増の1万3,213人でした。このうち合格者数は8,149人で合格率は約60%です。近年は電子機器組立て技能士の人気が高く、受験者数は5年連続で増加しています。(参考:平成30年度「技能検定」実施状況|厚生労働省)
合格基準は100点を満点として、原則実技試験は60点以上、学科試験は65点以上となっています。電子機器の組立工場や製造の仕事をしている人にとってはスキルの証明になるため、キャリアアップ・昇給を考えている人などが受験しています。
試験の難易度
試験の合格率は3級が約65%、2級が約45%、1級が約45%前後となっています。
1級、2級の難易度は少し上がりますが、3級は3分の2近くが合格しており、国家資格の中でも比較的簡単に取得できる部類に含まれます。とはいえ、しっかりと試験内容を事前に把握し、勉強をしていないと合格は難しいです。
試験の内容や勉強法などについて紹介していくので、参考にしてください。
試験内容
試験は学科試験と実技試験に分かれて行います。学科試験は電子機器そのものに関する出題と、その組み立て・修理技術に関する出題など、6科目が出題されます。
- 電子機器
- 電子・電気
- 組立て法
- 材料
- 製図
- 安全衛生
特級は五肢択一法、1~2級は真偽法と四肢択一法で全50問の出題です。3級は問題数が30問で真偽法による回答形式となっています。試験時間は特級が2時間、1級・2級は1時間40分、3級は1時間です。
実技試験(政策等作業試験)は実際に電子機器の組み立て作業を行います。指示に従いながら、シャーシやプリント基板、トランジスタなどの部品を使いながら、配線作業を行います。試験時間は標準時間1時間35分、打切り時間が1時間55分となっています。
電子機器組立て作業学科試験問題(3級)

一つ一つの問題の内容が正しいか、誤っているかを判断して解答してください。 1.フォトダイオードは、入射光を、光量(照度)に比例した電流に変換する素子である。 2.電磁継電器(リレー)は、回路を電気的信号によって開閉する部品である。 3.バリスタは、加える電圧の大きさによって抵抗値が変化する素子である。 正答:1.〇 2.〇 3.〇 (出典:平成31年度技能検定 3級電子機器組立て実技試験問題) |
3級の学科試験は〇か×かの真偽法です。
基礎的な問いが多く、事前に対策していれば2択ということもあり合格を目指しやすいです。出題内容は電流・電圧・抵抗に関するものや、部品の名称・利用目的などに関するものが多いです。問題は30問と少ないですが、その分一問の間違いが合否に影響しやすいので、ミスや取りこぼしがないようにしてください。
電子機器組み立て作業実技試験問題(3級)
注意事項及び仕様に従って、「光検出器」を組み立て、正しく動作することを確認しなさい。 ■仕様 ・シャーシ組み立て ・プリント板の組み立て ・配線 ・はんだ付け ・調整及び動作確認 など (出典:平成31年度技能検定 3級電子機器組立て実技試験問題) |
実技試験は指示や回路図に従って、与えられた部品を使ってテーマとなる電子機器を組立て、動作確認までの一連の作業を行う試験です。平成31年度の3級実技試験では「光検出器」の組み立てが出題されました。1時間30分(打切り時間2時間)の試験時間の間に作業を完了させなければいけません。
試験時間を超過すると超過時間ごとに減点されるため、必ず時間内に作業を完了させてください。
提示された回路図や部品端子図を正しく読み解く力と適切に工具を使う能力、迅速で正確な作業力が必要となります。与えられた仕様を正しく理解して、適切に作業する能力が求められます。
電子機器組立て作業学科試験問題(2級)
A群の問題(真偽法)は一つ一つの問題の内容が正しいか、誤っているかを判断して解答してください。 B群の問題(多肢択一法)は正解と思うものを一つだけ選んで解答してください。 【A群(真偽法)】 1.半導体レーザは、ガスレーザよりも小型で動作電圧が低い 2.スイッチング電源はシリーズ電源と比べて、小型軽量で電力効率は良いが、ノイズの発生が多い。 【B群(多肢択一法)】 1.トランジスタの電流値が、コレクタ電流Ic=3mA、ベース電流IB=20μAであった場合のエミッタ電流IEとして正しいものはどれか。 イ. 2.80mA ロ. 2.98mA ハ. 3.02mA ニ. 3.20mA 2.次の記述の( )内に入る語句として、正しいものはどれか。 デジタル信号の処理は、論理回路によって行われる。論理回路をトランジスタやダイオードによって組むことができるのは、トランジスタやダイオードが( )として働くからである。 イ. センサ ロ. スイッチ ハ. コンデンサ ニ. サイリスタ 正答. 【A群】1.〇 2.〇 【B群】1.ハ 2.ロ |
2級の学科試験は問題数が50問に増えます。
3級は真偽法による二択のみでしたが、2級ではA群(真偽法)25問、B群(多肢択一法)25問と難易度が高くなります。出題される問題も、3級と比較してより専門的、実践的な内容となっています。
正しく理解していないと正答できなくなっているので、過去問をやりこんで試験に備えてください。
電子機器組み立て作業実技試験問題(2級)
2級の実技試験は、3級の実技試験と比べ大幅に作業量が多くなります。3級は試験時間1時間30分でしたが、2級は4時間(打切り時間4時間30分)と倍以上の作業時間となります。その分、指示される作業が増えており、一つ一つの作業を正確に、かつ適切に行わなければ試験時間に間に合わなくなります。
平成31年度の2級実技試験では「省エネコントローラ」の組み立て、動作確認が出題されました。回路図や組立図、部品端子図の量が多くなり、支給される材料も増えます。焦らず誤りのないように作業するよう心掛けてください。
資格が役立つ場面

電子機器組立て技能士は、工場の製造ラインなどで電子機器を組み立てる仕事や、設備保全などの現場仕事などに就くことができます。電子機器の組み立てや配線を行っている工場の生産ラインでは、2級・3級の電子機器組立て技能士の活躍が期待できます。
実際に工場の組み立てラインの担当者には電子機器組立て技能士の有資格者が数多く活躍しており、資格手当などにより給料に上積みしてくれる会社もあり、資格を就職に生かしやすいです。さらに1級・特級保有者は上級職として給与水準が一段上がる可能性が高いです。また工場の設備保全の仕事などにも、電子機器組立て技能士の資格は有用です。
工場を取り囲む設備は電子機器の固まりが集まったものです。設備保全の仕事でも電子機器組立て技能士のスキルが生きるため、メンテナンス職などへも就職の口が広がります。
おすすめ勉強方法
電子機器組立て技能士の試験は学科試験と実技試験の2種類があるため、それぞれ別々に対策する必要があります。
おすすめの勉強方法は下記の通りです。
- 学科試験:参考書や過去問などのテキスト
- 実技試験:電子機器組立て実技試験課題キット
それぞれについて詳しく紹介します。
学科試験の勉強方法
学科試験はとにかく問題に取り組み、復習を繰り返すことが知識習得につながります。電子機器組立て技能士は受験希望者も多いため、参考書や問題集が数多く販売されています。
何冊も参考書を購入するよりも、1冊をじっくりやりこみ、間違えたところはできるようになるまで何度も復習するようにしてください。その後、過去問題に取り組み、合格点がとれるようになるまで、復習を繰り返すようにしてください。
テキストに迷った場合は、下記のテキストの人気があるので、購入して取り組むようにしましょう。
■[改訂版] 電子機器組立の総合研究 (技能研修&検定)
実技試験の勉強方法
実技試験は、試験と同じ課題を組立てできる「実技用キット」を使った練習がおすすめです。
■【2020年版】 国家技能検定 電子機器組立 3級 【フルセット】 ※乾電池別売り
プリント基板や実装部品など、ほぼすべて入ったフルセットキットなので、当日とほぼ同じ条件で課題に取り組むことができます。2020年度の技能検定で出題されたキットもすでに発売されており、直近数年間分のキットを購入して課題に取り組めば、試験のイメージもわきやすくなります。
ただし、1キット当たり価格が3,000円を超えるため、何セットも購入しにくいことがデメリットです。必要に応じて購入数を調整するようにしてください。
まとめ

ここまで電子機器組立て技能士について紹介しました。電子機器組立て技能士はライン生産現場のほか、設備保全・メンテナンスの仕事にも生きる国家資格です。
一度3級を取得して終わりではなく、2級・1級・特級とスキルアップにもつなげやすいです。さらに給与にも反映してくるため、資格をもとに経験を積みながらスキルアップしていきたい人にはおすすめの資格です。ぜひ記事を参考に試験対策して、電子機器組立て技能士を目指してください。
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