派遣検定とは?試験内容と使える場面
目次
「派遣検定」という資格検定があるのをご存知でしょうか。派遣社員として働いてみたいなど、派遣業界に興味がある人にはおすすめの資格検定です。派遣検定には、派遣元企業、派遣先企業、業務担当者など労働者派遣に従事する者のコンプライアンス能力の向上と、コンプライアンス能力の標準化を推進する目的があります。もちろん、ご自身が派遣社員として働く場合にも、派遣検定についての知識を持つことで自分の労働環境が適切なものであるのか判断するヒントにもなるでしょう。また、派遣検定の有無を確認することで、派遣企業の信頼度を図ることもできるのです。
ここでは、派遣検定の概要や出題内容、具体的な勉強方法、本資格検定を取得することのメリットなどについて説明します。
派遣検定とは
派遣検定とは、特定非営利活動法人「人材ビジネスコンプライアンス推進協議会」が派遣元企業、派遣先企業、業務担当者を対象にして開催している検定試験です。労働者派遣事業に従事する関係者が労働者派遣の関係法令に関する知識を有しているかどうかを調べるために、2010年から実施されています。労働者派遣に関わる担当者にとっては、業務のために重要な知識を吸収することができたり、派遣労働を希望する人たちからの信頼を得られたりというメリットがあるのです。それでは、検定試験の目的や開催要項など、具体的な情報について詳しく見ていきましょう。
派遣検定の目的

派遣検定は、労働者派遣事業に従事する企業や担当者のコンプライアンス能力の向上を目的に実施されています。受験者の多くは派遣元企業の派遣業務となっているようです。本検定を受けて合格認定されることで業務上の信頼感を得ることにつながると考えられます。
合格者には合格認定証や合格認定バッジが送られるほか、名刺にも合格者用のロゴを記載することができます。派遣労働に関する法令やコンプライアンスについて高い知識を持っていることが証明されれば、派遣労働者からも「この派遣会社なら大丈夫」「この人に担当してもらいたい」と思ってもらえるようになり有利です。
試験日・実施会場
派遣検定の試験は年に2回、8月や2月ごろに開かれます。試験会場は東京・大阪・名古屋・福岡など全国5~7か所に設けられます。
受験料は一般が8,000円、人材ビジネスコンプライアンス推進協議会の賛助会員が7,000円です。
受験者数
派遣検定の受験者数は、第1回から第21回までで合計13,893人に上ります。2018年8月から19年8月に実施した第17回~第19回はそれぞれ700人前後、2020年に実施した第20回、および第21回にはそれぞれ約560人が受験しています。
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
第17回(2018年8月) | 667 | 186 | 27.9 |
第18回(2019年2月) | 690 | 62 | 9.0 |
第19回(2019年8月) | 704 | 186 | 26.4 |
第20回(2020年2月) | 564 | 84 | 14.9 |
第21回(2020年9月) | 562 | 210 | 37.4 |
受験者層は前述した通り、派遣会社に勤務して派遣労働者への仕事紹介などを手掛ける派遣元責任者や担当者が多いです。試験内容は労働者派遣事業に3年以上携わった実務経験者の受験を想定した問題構成とされています。
試験の難易度
派遣検定の試験問題は1問につき2点の50問で、100点満点中80点以上が合格基準です。合格率は各回によってばらつきがあり、近年の中では第18回、第20回はそれぞれ9.0%と14.9%と低い合格率を示している一方で、第21回は合格率37.4%と、4割近くが合格しています。
試験内容
派遣検定の出題は幅広く、労働者派遣法、労働基準法、労働安全衛生法、個人情報保護法、社会保険などのジャンルが含まれます。回答方式はマークシートの択一式です。
労働者派遣法

労働者派遣法に関わる知識をもとにした問題にはどのようなものがあるのでしょうか。過去の出題例をひとつ取り上げてみました。
1~5の中から、労働者派遣法において派遣することができる業務を1つ選んでください。
- 配管工の業務
- スーパー等の駐車場管理に付随して行なわれる車両の誘導業務
- 建築事務所の管理建築士の業務
- 建設業経理事務士の業務
- 医療を受ける者の居住において行なわれる医療管理業務
引用元:人材ビジネスコンプライアンス推進協議会 例題2(禁止業務)
これは、「派遣労働者と派遣先を適正にマッチングでき、派遣労働者の権利や雇用の安定を守る能力がどれぐらいあるか」を問う問題といえます。第16回~第21回までの派遣検定のデータを分析した結果によると、労働者派遣法に関わる問題が100点満点のうち60点以上を占めていました。つまり、本検定試験に合格するためには本分野が最も重要ということです。
労働基準法
労働基準法に関わる知識を問うものとしては、以下の過去問題が例として挙げられます。
1~5の中から、労働基準法に関する記述として誤っているものを1つ選んでください。
- 法定労働時間は、原則として1日8時間、週40時間である
- 年次有給休暇の時効は、権利が発生した日から2年間である
- 休憩を60分付与するとき、20分の休憩を3回のように分割して付与してもよい
- 使用者は、業務上のケガや病気で休業している間は、解雇することはできない
- 妊産婦を時間外労働及び休日労働に従事させてはならない
引用元:人材ビジネスコンプライアンス推進協議会 例題8(労働時間)
上記のように「休暇の取得や労働時間の管理など、法に基づいた派遣労働者の権利を熟知し守る能力がどれぐらいあるか」を問う問題が出されます。第16回~第21回までの派遣検定のデータでは、労働基準法と労働契約法、労働安全衛生法に関わる問題で100点満点のうち20点程度のウエイトを占めていました。
労働・社会保険
労働・社会保険に関わる知識をもとにした問題例としては、以下のような過去問題が挙げられます。
1~5の中から、労働・社会保障制度に関する記述について正しいものを1つ選んでください。
- 派遣労働者が業務上被災した場合、派遣先の労災保険を使用する
- 健康保険、厚生年金保険は派遣労働者の希望により加入手続きをしないことができる
- 日雇い派遣労働者が連続30日以上同一派遣元に雇用され、その後も雇用が継続する見込みがある場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の被保険者になることがある
- 外国人労働者は、労働・社会保険の適用を受けない
- 派遣労働者が負担する労災保険料は、従事する業務によって異なる
引用元:人材ビジネスコンプライアンス推進協議会 例題7(労働・社会保険)
派遣労働者の労働・社会保険の内容についてどれだけ熟知しているかを問い、各労働者に適用される社会保障を案内できる能力をはかる問題が出されます。第16回~第21回までの派遣検定のデータでは、労働・社会保険に関わる問題は100点満点のうち6点程度です。試験問題の中での出題比率は低いといえますが、将来的に信頼度の高い責任者や業務担当者となるためには重要な分野です。しっかりと勉強しておく方が良いでしょう。
個人情報保護

個人情報保護に関わる知識をもとにした問題としては、例えば以下の過去問題が挙げられます。
1~5の中から、個人情報の取り扱いに関する記述として最も不適切なものを1つ選んでください。
- 派遣労働者の健康診断の結果は、産業医と衛生管理者だけが見ることにしている
- 派遣労働者になるための登録の際に、戸籍抄本の提出を求めている
- 派遣元管理台帳は、鍵付きのキャビネットに収納している
- 保管の必要がなくなった個人情報を定期的に破棄している
- 派遣先の要望があっても、労働者派遣法で定める通知事項以外の個人情報は伝えない
引用元:人材ビジネスコンプライアンス推進協議会 例題5(個人情報保護)
派遣労働者の個人情報を守り、労働者が社会的差別を受けるリスクを取り除くための知識や能力がどれだけあるかを問う問題が出されます。過去のデータからは、派遣検定の問題の中に占める割合は極めて低いジャンルいえるでしょう。しかしながら、個人情報は今後ますます取り扱いに注意が必要な分野となります。将来的に信頼度の高い責任者や業務担当者となるためにもしっかりと勉強しましょう。
資格が役立つ場面
派遣元企業に勤務する責任者や業務担当者にとって、派遣検定に合格することは非常に有利です。なぜなら、派遣検定合格者が多く在籍する会社であれば、「この会社なら安心して派遣先を紹介してもらえる」と労働者からの信頼を得られます。
また、派遣社員として働く人にとっても、派遣検定合格者の有無は優良な派遣会社を見極める際に役立ちます。派遣検定合格者であれば、派遣先企業にコンプライアンス違反があった際にも迅速かつ的確に対処してもらえると期待できるのです。
派遣社員を受け入れる、派遣先企業の従業員にとっても派遣検定合格の実績が役立つことがあります。例えば、自社内で派遣労働者と接する担当者に対して、派遣先が遵守すべき法令を周知し派遣先の役割についての理解を広げ、トラブルを防ぐことができるでしょう。このような派遣先企業であれば、安心して派遣社員として働くことができるものです。
おすすめ勉強方法

派遣検定の受験勉強にはテキストを繰り返し読んだり、過去の問題集を解いたりするなどの手段があります。人材ビジネスコンプライアンス推進協議会による直前対策講座を受けることも良い方法でしょう。厚労省や労働基準監督署が作成した資料が参考になったという意見も聞かれます。自身に合う勉強法で、派遣労働に関する法律的な知識を深めることが合格への近道となります。
それぞれの勉強方法について、詳しく見ていきましょう。
テキスト
人材ビジネスコンプライアンス推進協議会による派遣検定公式テキストを使えば、関連法令の内容を効率的に勉強できます。テキストは図表なども使って分かりやすく解説されており、テスト問題も掲載されています。
基礎を学びながら派遣検定合格を目指したい方に特におすすめです。テキストはインターネットから気軽に入手できます。
過去問・問題集
法令の知識を予め備えている人の場合、人材ビジネスコンプライアンス推進協議会による派遣検定の過去問をはじめとした問題集を解いて試験対策を進める勉強方法もおすすめです。解答できなかったり、間違えたりした問題に関しては、解説を読み込んできっちりと知識をつけるようにしましょう。過去問題集もインターネットから入手できます。
【amazon.co.jp限定】派遣検定 過去問題集(第16回・第17回)
まとめ

派遣検定は主に派遣元企業や派遣先企業の担当者を対象としています。しかしながら、派遣検定の合格者の有無は、派遣社員として働く人にとって派遣会社や派遣先企業を見極めるための良い指標になるでしょう。
派遣検定が今後より普及することで、派遣労働に関する法令やコンプライアンスを重視した労働環境が整備されると期待できます。派遣業界全体の活性化や発展につながる動きともいえるでしょう。
正社員や派遣など、厳選した様々な求人をご紹介。仕事にまつわる様々なコンテンツも発信しています。
すべてのサービスを無料でご利用いただけるため、「初めての派遣、正社員で不安」「現在就業中で悩んでいる」「相談だけしたい」という方も、まずはお気軽にご登録ください!
■無料登録はこちら
■LINE相談はこちら
ヒトサガスは1人ひとりの「働く」を応援しています。