人材派遣健康保険組合の解散後はどうしたらいい?
目次
「はけんけんぽ」の名称で知られる人材派遣健康保険組合。
派遣社員が加入できる社会保険として知られ、多くの方が加入していましたが、2019年に解散してしまいました。
本記事では、人材派遣健康保険組合が解散した理由や、解散後の加入者がどうなるのかなど、気になる情報をお伝えします。
人材派遣健康保険組合とは

正規雇用の社員に対し、収入や待遇面で不利になりやすい派遣社員をサポートするために、人材派遣健康保険組合は誕生しました。
平成14年に設立以来、多くの派遣社員が加入していましたが、残念ながら令和元年に解散しています。
人材派遣健康保険組合、派遣契約期間が終了しても、要件さえ満たせば保険資格を継続できる魅力がありました。
短期の現場を渡り歩くことも多い派遣社員にとっては、とても魅力的な保険だったのです。
人材派遣健康保険組合、病気やケガをした場合の医療費負担はもちろん、仕事を休んだときの補償もありました。病気やケガなどが原因で仕事を休まざるをえなくなったとき、4日目から傷病手当金が支給されたのです。
また、年に1度の定期健診利用や健康相談、メンタルヘルスカウンセリングの利用など、手厚いサポートもありました。
まさに派遣社員の健康を陰から支えてくれた保険ですが、なぜ解散してしまったのでしょうか。
人材派遣健康保険組合が解散した理由
加入者の高齢化が進んだことが、もっとも大きな解散理由として挙げられます。
日本の高齢社会化が進んでいるのは知られた話ですが、人材派遣健康保険組合への加入者もどんどん高齢化が進みました。
高齢者は若い世代に比べ、健康問題を抱えやすい傾向があります。多くの高齢加入者が保険を利用すれば、運営にしわ寄せが来ます。
つまり、高齢加入者が増えすぎたことで、人材派遣健康保険組合の支出が大幅に増え続け、運営ができなくなってしまったのです。
保険は、加入者の支払う保険料で運営されています。
集めた保険料で加入者の医療費を負担しますが、支出が圧倒的に増えてしまうと、保険料でカバーしきれなくなるのです。
保険組合としての正常な運用ができなくなったことで、人材派遣健康保険組合は解散しました。
設立された当初はまだそこまで高齢化が顕著でなかったため、先を見誤ってしまった結果といえるのかもしれません。
人材派遣健康保険組合の解散後
それまで加入していた多くの方は、別の保険へ再加入しなくてはならなくなりました。大半は、全国保険協会の社会保険へ加入することとなったのです。
また、ほかの保険へ加入したとなると、それまで使用していた保険証は使用できなくなります。古い保険証は派遣会社へ返し、新たな保険証を用意してもらわなくてはなりません。
もうひとつ大切なポイントとして、保険料が高くなる可能性があります。加入する保険が変われば、保険料率も変わるからです。
新たな保険組合への加入

日本は国民全員の保険加入が基本のため、人材派遣健康保険組合が解散したら別の保険に加入しなくてはなりません。
日本における公的医療保険制度としては、以下のものが挙げられます。
- 健康保険
- 共済保険
- 国民健康保険
- 船員保険
- 退職者医療保険
- 後期高齢者医療保険
多くの方になじみがあるのは、健康保険と国民健康保険ではないでしょうか。
国民健康保険は、健康保険や共済保険などに加入できない方を対象とした保険です。
自営業や個人事業主、無職の方なども国民健康保険に加入します。
健康保険は、別名協会けんぽの名で知られています。
実は、人材派遣健康保険組合が解散したあと、それまで加入していた多くの方はこの協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入しました。
実際には、所属する派遣会社により加入する保険が変わります。
場合によっては、派遣先の保険に加入するケースもあるようです。あらかじめ派遣会社の担当者に問い合わせましょう。
保険証が変わる
加入する保険が変われば、保険証も変わります。
人材派遣健康保険組合からほかの保険へ加入した場合も、それまで使用していた保険証は使えなくなるため注意が必要です。
ただ、新しい保険証をまだ受け取っていないのなら、古い保険証を使って診察や治療が受けられます。
保険証の切り替えは、基本的に派遣会社が行ってくれるため、自身で手続きを行う必要はありません。
新たな保険証の受け取り方については、派遣会社によって異なるためきちんと確認してください。新しい保険証が自宅に届くケースもあれば、古い保険証を手渡しで交換し新たなものを手に入れることもあります。このあたりの対応は派遣会社ごとに異なるため、注意が必要です。
保険料が高くなる

加入する団体が変われば、当然保険料も変動します。
保険料は保険料率によって支払う金額が異なりますが、人材派遣健康保険組合では9.7%を適用していました。
この保険料率は一律であり、収入や住んでいる地域などによって変わることはなく、加入者と運営者が保険料率を折半して負担していました。
つまり、9.7%の保険料率でも実質的にはその半分、4.85%しか加入者は負担しなくてよかったのです。
では、多くの方が加入し直した協会けんぽでは、どの程度の保険料率なのでしょうか。
協会けんぽの場合、都道府県によって保険料率が異なります。
そのため、かつて加入していた人材派遣健康保険組合よりも、保険料率が高くなってしまう方もいるのです。
以下に、令和2年9月時点における主要都市の協会けんぽ保険料率をまとめました。
- 北海道 10.41%
- 東京 9.87%
- 神奈川 9.93%
- 新潟 9.58%
- 長野 9.7%
- 愛知 9.88%
- 大阪 10.22%
- 広島 10.01%
- 香川 10.34%
- 福岡 10.32%
- 沖縄 9.97%
主要都市の多くは人材派遣健康保険組合の保険料率、9.7%よりも高い数字です。この中では唯一新潟が9.58%とやや低く、長野が協会けんぽと同じ9.7%との結果になりました。
このように、協会けんぽでは住んでいる地域により保険料率が大きく変わります。
保険料率が変われば、支払う保険料も変わるため、具体的に月々どれくらいの負担となるのか把握しておかねばなりません。
全国保険協会の今後

協会けんぽへ加入し直したものの、また人材派遣健康保険組合のときと同じように、解散してしまうのではないかと不安を抱く方は少なくないでしょう。
そのようなことになれば、再び新たな保険団体へ加入せねばならず、また保険料が変化するかもしれません。
協会けんぽでは、2019年から5年ほどは10%前後の保険料率で推移すると分析しているようです。
10%を大きく超えてしまうと、労働者やその家族の生活に与える影響も大きくなってしまうため、このラインで押さえたいと考えています。
現段階では懸念する要素は少ないのですが、今後のことは誰にもわかりません。
人材派遣健康保険組合のときと同じように、加入者の高齢化が進み運営の財政を圧迫してしまうと、保険料が上がる可能性はあります。
ただ、もともと協会けんぽは国の組織である社会保険庁が運営していました。
そのため、保険料の大幅アップや解散などの由々しき事態となる前に、国が介入する可能性も考えられます。
いずれにしても、今後協会けんぽがどのような道をたどるか、日ごろからアンテナを張っておく必要があります。
まとめ
人材派遣健康保険組合が解散し、加入していた多くの方は協会けんぽに加入し直しました。
その結果、今までよりも高い保険料を支払わなくてはならなくなった方も中にはいます。
また、最後にお伝えしたように、協会けんぽも今後どうなるかわかりません。もしかすると、そのようなことがあるかもしれない、との覚悟は心の片隅に抱いていたほうがよいでしょう。
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