コロナによる派遣の雇止めとは
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、業績や経営などが悪化したことによって派遣の雇い止めや解雇された働き手が増加しています。総務省による2020年9月1日発表による労働力調査によると、2020年7月の派遣労働者数は前年同月から16万人減少しているのです。新型コロナウイルスが感染拡大しはじめたタイミングと、3ヵ月ごとに更新するという派遣契約の更新時期が重なり、このようなデータが出ています。では、コロナによる派遣の雇止めに対して対処する方法はないのでしょうか。今回は、コロナによる派遣の雇止めが無効となる場合や、対処法について解説します。
雇止めとは

雇止めとは、派遣社員などの有期雇用労働者に対し、企業が契約の更新を拒否し、契約期間の満了をもって雇用を終了させることです。
有期雇用契約は雇用期間を定めた契約なので、派遣社員の場合、原則として派遣契約期間が満了すれば終了です。しかし、無期雇用の社員と業務内容が変わらない場合や、不当な理由によるもの、契約が更新されると期待させる言葉や行動があった場合、契約書の更新における内容などによって、雇止めが無効となる場合があります。
また、同じ企業との間で有期労働契約が何度も更新され、通算5年以上となった場合は、労働者からの申込みによって期限の定めのない向き労働契約に転換することを求められる無期転換ルールが労働契約法第18条によって定められています。
派遣労働者の場合でも同じ考え方が適用され、派遣労働者でも派遣元、つまり雇用契約を結んでいる派遣会社との間で5年を超えて有期労働契約を反復更新すれば、無期転換権が発生するのです。ただし、あくまで無期転換権が発生するのは派遣元会社との間であり、派遣先企業との間に発生するわけではないことに注意してください。
コロナによる派遣の雇止めの場合は無効を主張できる?
派遣先企業がコロナによってなくなったため、派遣社員が派遣元会社から雇止めされるという労働相談は後を絶ちません。実は法律上、派遣先企業は派遣元企業との間の契約を簡単に打ち切ることはできないのです。労働者派遣法29条の2によると、派遣先企業は自社都合で派遣元会社から派遣社員を受け入れることをやめるためには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 派遣社員に対し新しい就業機会を確保すること
- 派遣元会社に派遣社員の休業手当などにかかる費用を支払うこと
- その他派遣労働者の雇用安定の措置をとること
コロナに伴う事業停止命令もこの法律の規制を受けることは厚生労働省出している通達によって明らかです。
参照元:https://www.mhlw.go.jp/content/000622036.pdf
やむを得ない事情により、派遣先企業が契約解除した場合であっても、派遣元企業は即座に派遣社員を雇止めできません。派遣先企業と派遣元企業の契約と、派遣元企業と派遣社員の契約は全くの別物だからです。派遣先企業による契約解除があった場合でも、派遣元企業と派遣社員の雇用契約は生きています。そのため、派遣元企業は、派遣先企業がないのであれば、本社業務など自社の関連業務や別の派遣先確保など、派遣社員の就労確保をしなければなりません。
労働契約法により、仮に就労先を見つけられなかった場合に雇止めするためには、雇止めがやむを得ないという社会的に合理的な理由がなければならないと定められており、要件を満たさないと派遣社員を雇止めすることはできないのです。したがって、派遣元企業は派遣社員を簡単に雇止めにするということはできません。
雇い止めが無効になるポイント

「雇い止め法理(労働契約法19条)」は以下の通りです。
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。 |
引用:e-gov 法令検索「平成十九年法律第百二十八号 労働契約法」
派遣元企業が派遣社員を派遣する場合は、契約の更新を行うのか行わないのか、またそれを判断するための基準などを契約書に記載し、説明する義務があります。
契約更新する際の具体的な内容には「自動的に契約を更新する」「契約を更新する場合があり得る」「再契約は行わない」などがあり、契約が更新される可能性のある場合は、会社側は派遣社員に対して契約更新についての判断基準を明確に説明しなければなりません。
派遣先企業が派遣社員の契約を終了する場合、契約の期間が1年を超えている場合や、契約の更新回数が3回以上である場合には、雇止めをする30日前までに派遣社員に予告する必要があります。もし30日に満たない場合は、日数分の平均賃金(予告手当)を支払わなければなりません。
雇止めをする場合の理由について働き手が証明書を請求した場合には、企業側は証明書を交付しなければならず、この時、雇止めの理由として、契約期間の満了を理由にすることは認められません。雇止めが有効になる理由として挙げられるのは「更新する回数の上限を契約当初から定めていた」「契約の更新しないことで合意していた」などです。
雇い止めの無効を主張する場合の対処法
雇止めをする場合には、派遣社員であっても正社員の解雇理由と同じように正当な理由が必要です。理不尽な理由や、納得できない理由で雇止めをされるといったトラブルにあった場合は、総合労働相談コーナーや労働組合、弁護士などに相談してみましょう。
総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、職場のトラブルに関する相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っており、いつでも気軽に利用できます。新型コロナウイルスによる解雇や雇い止め、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としており、予約は不要で無料で利用可能です。性的指向や性自認に関する労働問題についても対象としており、労働者や事業主のどちらからの相談にも専門の相談員が面談もしくは電話で対応しています。また、労働基準法等の法律違反の疑いがある場合においては、行政指導などの権限を持つ担当部署に取り次ぐという流れです。
労働組合
労働組合とは、労働者が団結して労働条件の改善を図るためにつくる団体です。団体交渉やストライキなどの団体行動する権利は、労働組合法や、労働三権により保障されています。労働組合の具体的な活動内容は、労働条件の改善・維持や経営に対する提言や職場環境の改善の申し立て、不当な解雇や安易なリストラに対して、撤回の申し立てなどの団体交渉です。また、団体交渉しても会社が要求に応じようとしない場合は、ストライキなどの団体行動権も保障されています。派遣社員であっても労働三権は保障されており、労働組合によって交渉することが可能です。
弁護士

派遣社員が雇止めにあった場合、弁護士に依頼して派遣元企業と交渉してもらい、問題解決を図ることが可能です。しかし、派遣元企業側に法的に正当な理由がある場合、必ずしも交渉で解決できるとは限りません。その場合には労働審判という手続きがあり、原則として3回以内に審理を終わらせるとされているため、平均70日ほどでの解決が期待できます。労働審判に対して、企業側から異議申立てがあった場合には、労働裁判を提起することになります。
まとめ
派遣社員の場合、派遣元会社との間で有期契約を更新していくので、期間の定めがある契約が基本ですが、派遣元企業が簡単に雇止めできるわけではありません。また、新型コロナウイルスの感染拡大といった予測不可能な場合であっても、派遣先企業は安易な派遣契約の解除はしないようにと厚生労働省の通達が出ています。それでも派遣の雇止めのケースは後を絶ちません。もしそうした事態に陥った場合は、総合労働相談コーナーや労働組合、弁護士に相談し、派遣元企業と交渉して自己の権利を守ることが大切です。
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